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2004.03.10
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 「東京都庁」

vol.23 西新宿のランドマーク「東京都庁」
都営大江戸線都庁前駅より徒歩1分、営団丸の内線西新宿駅より徒歩5分、JR新宿駅西口より徒歩約10分
東京都新宿区西新宿2-8-1 TEL:03-5321-1111(代表)
開室時間:9:30〜23:00(※最終入室は終了時間の30分前まで) 展望室入場無料
http://www.yokoso.metro.tokyo.jp/

助手: はかせ、ついに今回は都庁ですよ!これぞ「超高層」って存在ですもんね。
博士: 新宿西口の高層ビル群でも随一のランドマークだからな。
助手: 都庁ってなんだかゴシック建築の大聖堂をハイテク化したような風貌がありますよね。
博士: なかなかオモシロイ例えではないか。そう、これが日本の近現代建築を代表する丹下健三先生(※1)の作品なのじゃ!ちなみに1957年にできた旧東京都庁舎も丹下先生の作品なんだぞ。
助手: へぇ、そうだったんですか。
博士: 「へぇ」って、おいおい大丈夫?
助手: 大丈夫ですって!何てったってボク、都民ですから!やっぱり、まずは展望台まで一気に上がりますか!今日は天気もいいし富士山もキレイでしょうねー。
博士: 待て待て、都庁は展望台だけではない!見どころはたくさんあるんだぞう(※2)。
助手: では、どこから行ってみましょうか?
博士: まずは第一本庁舎と都議会議事堂の間に位置する「都民広場」からじゃ!約5,000平方メートルのこの広場は、まさに都民の憩いの場!放射状の形態がどことなくイタリア・シエナのカンポ広場のように見えんか?
助手: 知ってますよ、パリオ(各街区対抗の競馬祭り)が行われる、あのカンポ広場ですよね!そうそう、あそこも半円形の広場なんですよね。
博士: 今日は予習ができているようだな。ここに8体のレリーフがあるだろ、この「都民広場」のほかにも都庁舎のいたるところでアートワークを眼にすることができるんじゃ、その数なんと38体!日本の現代美術を代表する作家や代表的な外国の作家のほか、市民や若手作家による公募作品もあるんだ。
助手: そういえば庁舎のいたるところでアート作品を目にしますよね。これってやっぱり都知事が現代美術に関心が高い証拠でしょうか?
博士: 確かにそうかもしれんぞ。「日本のモンパルナスにならんことを期待して」トウキョウワンダーサイトもできあがったんだし、この都庁にも「トーキョーワンダーウォール」と名付けられた一般公募のアートの壁面があるんじゃ。
助手: いいですよね。ライフスタイルのなかにアートを展開するって、すごくゆとりがあって、心が満たされる感じがするんですよ。
博士: おおっと、語りますね〜。
助手: はかせ、見てください!後ろの建物の上に円形の部屋が見えますよ!
博士: あれは都議会議事堂の本会議場(※3)じゃよ。あそこも見学することができる場所なのだ。行ってみる?
助手: 興味アリアリっす!だってなかなか体験できることじゃないですからね。え〜っと、本会議場は7階ですねっと、おおっ、はかせ・・さすがに厳粛とした雰囲気があたり一面に。
博士: 見ろ、絨毯張りの通路、大理石の柱、格式の高さが伺えるではないか!
助手: ありましたよ!会議場入口。今日は議会がないから「しーん」としちゃってますけど、普段はここで熱い議論が繰り広げられているんでしょうね、きっと。
博士: 「異議ありっ!!」っく〜、きもちいい!
助手: びっくりするじゃないっすか!!誰もいないからって!
博士: 言ってみたかったんだよなぁ〜、国会議事堂ではちょっぴり、びびってしまったんで。
助手: たのんますよ、ほんとにー。さて、つぎはいよいよ展望台(※4)ですね!
博士: 北と南とふたつの展望台があるが、今日のように澄んだ晴天の日には北側の展望台から富士山を望むに限る!
助手: はかせ、エレベーターで展望室まで、わずか55秒だそうです!
博士: 確かに早い!しかし、早いだけじゃないのだ!床に10円玉立ててみ。
助手: こうですか?・・・おおっと、すごい倒れない!
博士: どうじゃ、揺れも最小限に抑えているだろ!早くて安全、これ大切ね。
助手: っとゆーまに、45階。202メートルのパノラマへいざ!きたー!!高いっすね、さすがに。真下を歩く人がありんこより小さく感じるし、ガラスのへりまで来て見下ろすとリアルに高さを感じる。
博士: ここの手すりは、バーが途中とぎれているだろ、車椅子の来室舎に対応したバリアフリー設計だな。
助手: 広いですねー、関東平野は。山並みがあんなに向こうなんですもんね。
博士: 1,300万以上の人のドラマがあるんじゃな〜。
助手: ドラマって、はかせ〜、哲学者ぶったようなこと言ってるつもりなんですかぁ?ところで、気になることがひとつあるんですが・・。
博士: 何じゃ?カジノか?
助手: 違いますよ。この都庁には全体で約12,000人以上もの職員が働いているんですよね、みんなどこにお昼しに行くんでしょうかね?
博士: そりゃ〜、わからん!けど、第一本庁舎の32階には社員食堂がある!そして、ワシらもそこで食べることは可能なんだ!
助手: 行かせてください!興味アリアリっす!
博士: 眺めも良さそうだし、職員さんの邪魔にならないように行ってみますかい!
助手: GO!都庁定食!

“花より団子”なふたりがランチに駆けつけるところで、今回はおしまい。次回もお楽しみに。

今週の建材

航空障害灯航空障害灯
航空機の夜間航行時などに障害となる建造物の存在を視認させる目的で使用される灯火。国内において地表または水面から60メートルを越える建造物には、航空障害灯の赤い点滅灯火の設置が義務づけられている(航空法第51条)。都庁のように地上高150メートルを越えるビル等建物の場合、最上部には中光度赤色航空障害灯(1,500カンデラ以上)を、中層部には基準に従った間隔で低光度航空障害灯(100カンデラ以上もしくは32カンデラ以上)を設置しなければならない。


無駄demo知識

○旧都庁舎は現在の有楽町・東京国際フォーラムの場所に明治27年(1894)以来、96年間の長きにわたり都政をつかさどっていた。
○都庁も超高層建築だが、超高層建築とは31メートルの建物の高度制限が撤廃されたときに、31メートルを大幅に超える建物に対して作られた名称。日本で最初の超高層と呼ばれた建物は霞ヶ関ビルディング(1968)。
○都庁第一本庁舎の高さは48階建て243メートル。ちなみに日本で一番高いのは横浜「ランドマークタワー」で70階建て269メートル、世界一はマレーシア・クアラルンプールの「ペトロナスタワーズ」で88階建て452メートル。


補足de知識

※1 丹下健三

1913年大阪生まれ。東京大学建築科を卒業後、ル・コルビジェに傾倒し、前川國男の建築事務所に入る。日本の伝統建築法にコルビジェの表現法を組み込んだ建築を含む計画案を1951年のCIAM(近代建築国際会議)で発表、海外の建築界にデビューする。国内外の数々の大学でも教育活動を行い、多くの人々との交流の中で刺激を受けて見聞を広める。また様々な分野で活躍する芸術家たちと共鳴、研磨しあう中で新しい表現を創り続ける。発想の基本は、建築の全体配置から建築物に至るまで、はっきりとした構造をもち、それを明快に表現するところにある。国内外の建築物を数多く手がけ、1979年文化功労者となり、1980年文化勲章を受章。現在も建築界の第一人者として精力的な活動を続けている。主な作品に広島平和会館(1955)、香川県庁舎(1958)、倉敷市立美術館(1960)、国立屋内総合競技場(1964)などがある。

左:ゴシック建築を連想させる第一本庁舎
中:立方体を積み重ねたようなファサード
右:丹下建築の意匠を模型で見学(北展望室)

※2 東京都庁

1991年に竣工された都庁は第一本庁舎(地上48階・地下3階)、第二本庁舎(地上34階・地下3階)、都議会議事堂(地上7階・地下1階)からなる、総敷地面積42,941平方メートル、延べ床面積約381,000平方メートル。職員数約12,700人を要する。1986年に行われた新都庁舎の指名競技設計で1等当選した建築家・丹下健三氏が設計を担当した。一般の見学が可能な施設は展望室のほか、第一本庁舎9階の「防災センター」「都民情報ルーム」(同庁舎3階)、都議会議事堂内7階の「本会議場」、2階「都議会PRコーナー」、第一本庁舎と都議会議事堂を結ぶ渡り廊下「ワンダーウォール」など、さまざまな施設が整っている。

左:第一本庁舎入口。エントランスは非常に高い天井
中:庁舎のいたるところにアートが点在している
右:憩いの広場「都民広場」は団体旅行の集合場所にもなる

※3 都議会議事堂

都議会を象徴し、活動の中心となる議事堂。都民から選出された議員がここに集まり、都政に関するさまざまな事柄を決定する都議会は傍聴席からの見学も可能。一般傍聴券は本会議の当日に、開会予定時刻の1時間前から議事堂2階の受付で先着順に配布される。2階南側の「都議会PRコーナー」では展示パネル・パソコン・ビデオによる都議会の仕組みを見学することができる。地上7階、地下1階高さ41メートル。

左:厳粛な雰囲気漂う本会議場内
中:本会議場全体模型は2FのPRコーナーで観ることができる
右:議事堂から「都民広場」を見下ろす

※4 展望台

第一本庁舎1階から専用エレベーターで約55秒、地上202メートルからは首都東京はもとより、お台場、横浜、晴天の澄んだ日には後方に富士山や周辺の山並みが見渡せる、まさに東京を代表するバード・アイ・ビューがひろがる。北東方面には新宿副都心、明治神宮の森を越えて東京タワーが、南西方面は市街地再開発事業が進む西新宿を越え、武蔵野の平野がどこまでもつづく。北・南展望台ともに45階に位置しているが、開室時間はそれぞれ異なる。

左:市街地再開発が進む西新宿、中野方面(北西方面)
右:新宿パークタワーの奥に広がる明治神宮(南西方面)


今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

今週の「ツウ」快ふしぎ発見!
都庁のいたるところで東京都のシンボルマークの「いちょう」を目にすることができる。例えばエントランス部ガラスの衝突防止マークや、広場の車両進入禁止防柱など。なかでもひときわ大きく目立つのが第一本庁舎12,3階部に位置する、いちょうに象られた大きな円形ガラス。これぞ東京の顔!?


散歩de探訪録

≫vol.01 横浜・赤レンガ倉庫
≫vol.02 お台場・ビーナスフォート
≫vol.03 鎌倉・円覚寺
≫vol.04 多摩・コカ・コーラ多摩工場
≫vol.05 国会議事堂
≫vol.06 会津・大内宿
≫vol.07 黒部ダム
≫vol.08 草津温泉郷
≫vol.09 ベイブリッジ
≫vol.10 小江戸・川越
≫vol.11 浜離宮恩賜庭園
≫vol.12 東京大学
≫vol.13 東京駅
≫vol.14 銀座
≫vol.15 等々力
≫vol.16 江の島
≫vol.17 横浜中華街
≫vol.18 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その1
≫vol.19 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その2
≫vol.20 幕張ベイタウン
≫vol.21 横浜ベイサイドマリーナ
≫vol.22 浅草・仲見世通り
≫vol.23 東京都庁
≫vol.24 東京湾アクアライン・海ほたる
≫vol.25 横浜港大さん橋国際旅客ターミナル
≫vol.26 総集編 長い散歩のあとに・はかせインタビュー



ライタープロフィール

◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:平野星良(ひらのせいら)