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2003.10.15
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 「鎌倉・円覚寺」

vol.3 もみじ寄り添う、鎌倉最古のわらぶき屋根「鎌倉・円覚寺」

JR横須賀線 北鎌倉駅徒歩1分。
4月〜10月 8:00〜17:00  11月〜3月 8:00〜16:00
拝観料 200円(小人 100円) 駐車場 25台
TEL:0467-22-0478 *週末には座談会アリ(要予約)
http://www.kcn-net.org/kamakura/kitakama/kita-enk.html

助手: 紅葉がきれー。秋の鎌倉ってイイっすね!!
博士: 今週は、紅葉薫る「円覚寺」じゃ。
助手: 鎌倉五山の1つで…(※1)
博士: 壮大な禅寺じゃの。
助手: ぜんぜん。(えせ真田広之調)なんちて。
博士: 和ケンチクゥー 禅! なんちて。
助手: (ニコッ)そうです。今回のポイントは「禅宗様(唐様)建築」。(※2)さ、最初の見どころ山門に行きましょ!(※3)
博士: 重層な構えじゃろ!なんせ寺内で、重要な3つのお堂(山門〜仏殿〜方丈)の1つで、悟りの境地を開くための「仏殿」へ向かう、玄関にあたるからの。
助手: そーいや、山門〜仏殿〜方丈と縦一列に並んで配置されてますねぇ、これが悟りへの道ってワケですね。
あ!この組木、カックイイ!
博士: ふむ。それこそ「禅宗様(唐様)建築」の特徴じゃ。梁が突き出てるんで“木鼻”と呼ばれておる。(※4)
助手: なぁるほど・ザ・ピノキオ。
博士: おまったさんでした、次は仏殿!
助手: (困惑)あ、え、柱や床が変わってるんですよねぇ。
博士: ハイ、きえた!
助手: (さらに困惑)あ、え、博士!フツーに説明してください(懇)。
博士: まだ勉強不足やの。室内を見よ、内側のさらに内側を取り囲むように柱が立っている…この空間を内陣という。ほら内側の天井に龍が描かれてるじゃろ、鏡天井と言って、あれも禅宗様建築の特徴じゃ。他にも海老虹梁(えびこうりょう)、むき出しの石床とか。これらすべてが宗時代の中国に倣ったものじゃ。(※5)
助手: あ、あの栗っぽい窓もそうですよね?(※6)
博士: (こっ“くり”)
助手: 見えないギャグはやめて下さいよ!そんなことより国宝!
博士: そーじゃ、舎利殿!!!!!!! …ん?…ど、どぉした?
助手: …。入れません。
博士: 入れないとは、どーゆことだ!
助手: …。今は一般公開されてないんです。(※7)
博士: (ぷる)う、嘘ぉ!(ぷるぷる)うわぁーん、一番楽しみにしてたのにぃぃいいいいい!
助手: は、はかせ!いや、博士ちゃん!ほ、ほらぁ、あそこに抹茶も和菓子もあるよ。ほら、あっちには福ところてんも!(※8)ね、ね、泣かない、すねねない、いじけないで!
博士: き・きみぃ!
助手: (ドキッ)
博士: 瓦せんべい、忘れちゃいかんよ。
助手: !!

助手がせんべいを割ってたべつつ、なぁんか割り切れない想いを抱いたところで今回はおしまい。次回もお楽しみに!

今週の建材

囲碁の石っぽい石、礎盤囲碁の石っぽい石、礎盤
礎盤とは、柱の下にあるお椀っぽい形をした石のこと。地面に敷きつめられた平らな石床と柱の間に設置され、地面の高さの違いをこの礎盤で調整。礎盤は、建物全体を水平にする役割も担っており、柱に接続(組み合わ)されている。


無駄demo知識

○現存する図面によると、1辺7間の正方形という、超大規模な仏殿が構想されていたらしー。[1間=6尺(約1.82m)、1尺=10寸(約30cm)、1寸=10分(約3cm)、1分は約3mmとなる。]
○取材中、リスとタヌキに遭遇!円覚寺は野生動物の宝庫でもあるようだ。
○ちなみに、鎌倉だけでなく京都五山もあるよ。



補足de知識

※1 鎌倉五山と円覚寺
建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺。円覚寺は、第二位の寺格で、弘安5年(1282年)創建。北条時宗時代に、無学祖元が元寇による死者を弔うために建てた寺なのだとか。ちなみに名前の由来は、建立工事の際「円覚経」と呼ばれる経典が発掘されたことからだそーだ。

※2 禅宗様建築って?
鎌倉時代に伝来した禅宗。その教義とともに伝わった中国・宋の建築様式のことを禅宗様建築と呼んでいる。

※3 山門は三門!
山門は三門ともいい、三解脱門(空門、無想門、無作門)の略。楼上には観音像や十六羅漢像などが安置されているらしー。一般には公開されていないけどね。

※4 突き出た木製の鼻!?
木鼻とは、柱より突き出た梁の部分のこと。禅宗様建築の特徴で、装飾的な意味合いが濃いよーだ。

※5 仏殿にみる、梁と天井と床

左:横から見た海老です、海老虹梁
中央:龍が描かれた、内陣の鏡天井
右:板張りでも畳でもない、石床

※6 花のように美しいカーブ!
花頭曲線(かとうきょくせん)と言われる緩やかな木枠が用いられた窓を花頭窓という。この時代、木を曲げるのは高度テクが必要なはず。

※7 最古の禅宗様建築かつ鎌倉最古の木造建築!
舎利殿は鎌倉唯一の国宝建造物で、こけら“わら”の二層屋根を持つ木造建物。現在も、円覚派の雲水が全国から集まり修行に使っているので、普段は非公開です。方丈の宝物風入れ時期に合わせ、11月3日前後に一般公開!このチャンスをお見逃しなく!

※8 おすすめ甘味情報(円覚寺内)
● 「仏日庵」
拝観奉納金 \100 抹茶奉納金 \500
侘び寂びを感じられる庭園で、お抹茶とお菓子を舌鼓。

● 洪鐘近く「弁天堂茶屋」
福ところてん \500〜
あんみつ、おしるこなど甘味が頂ける!ここからの鎌倉眺望もお勧め。

● 総門近く売店など
かわらせんべい \500〜
北条時宗ゆかりの品らしー。お土産用に、化粧箱入りもあり。

今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

今週の「ツウ」快ふしぎ発見! 素晴らしい彫刻ですが、なんとこれも木鼻の一種。この写真のように、繰形、彫刻などが施されるものは、その形状によって拳鼻、象鼻、獏(ばく)鼻などという。仏殿の前門にある獅子をはじめ、円覚寺内には龍の木鼻や蔓のような彫刻のある木鼻もあった。ぜひ、チェックしてみてね!


散歩de探訪録

≫vol.01 横浜・赤レンガ倉庫
≫vol.02 お台場・ビーナスフォート
≫vol.03 鎌倉・円覚寺
≫vol.04 多摩・コカ・コーラ多摩工場
≫vol.05 国会議事堂
≫vol.06 会津・大内宿
≫vol.07 黒部ダム
≫vol.08 草津温泉郷
≫vol.09 ベイブリッジ
≫vol.10 小江戸・川越
≫vol.11 浜離宮恩賜庭園
≫vol.12 東京大学
≫vol.13 東京駅
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≫vol.15 等々力
≫vol.16 江の島
≫vol.17 横浜中華街
≫vol.18 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その1
≫vol.19 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その2
≫vol.20 幕張ベイタウン
≫vol.21 横浜ベイサイドマリーナ
≫vol.22 浅草・仲見世通り
≫vol.23 東京都庁
≫vol.24 東京湾アクアライン・海ほたる
≫vol.25 横浜港大さん橋国際旅客ターミナル
≫vol.26 総集編 長い散歩のあとに・はかせインタビュー



ライタープロフィール

◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:たばたひろえ