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2003.10.01
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 横浜・赤レンガ倉庫

vol.1 大震災・二度の戦争に耐え、今も佇む「横浜・赤レンガ倉庫」

JR・東急東横線・市営地下鉄桜木町駅 徒歩15分。
横浜市中区新港一丁目1番2号 11:00 〜 23:00
http://www.yokohama-akarenga.jp/

助手:せんせ、今回は横浜ですよ。横浜・赤レンガ倉庫!
博士:略して、ハマコー。
助手:いきなりダジャレかよ!しかも、一字ちが・・・
博士:ぢゃ、ハマンガ。
助手:かわゆく言ってもだめっ!
博士:ぢゃ、起動戦隊・ハマレンガー。
助手:それ、略でも何でもないじゃん!(泣)
博士:Oh yeah! 赤レンガー1号!
助手:俺 2号!
・・・(ハッ)・・・。せんせ、流石です。それ、フリだったんですね?そうです。赤レンガ倉庫は、創建当時は同じ大きさ同じ形式で作られた単なる物流倉庫だったんです。しかし、現在では1号館と2号館でまったく性格の違う施設として用いられているんですよ。(※1)1号倉庫も昔は2号と同じ大きさで、関東大震災で半壊。補修して半分だけ現存してるんですよね。
博士:まずは外観チェックじゃ。きみ、屋根を見たまえ。
助手:せんせぇー、レンガ倉庫に来て、レンガより先に「屋根」って・・・。あれ???屋根だけ見ると「お寺」と・・・
博士:カワラない、瓦屋根じゃ。1・2号合わせ約14万枚も使用されとる。(※2)
助手:ったく、またダジャレっすね! にしても、レンガと瓦。和洋折衷なのに、なんとも馴染んでカッコイイですね。
博士:やるじゃん、妻木。
助手:それ、倉庫設計者だろ、オイ(泣)明治の偉大な建築家になんてこと・・・(※3)
博士:アイツ、ドイツかぶれのエリートなんだけど、地震・雷・火事・おやじギャグにうるさくてなぁー。
助手:・・・(敢えて無視)・・・耐震なんて考えが薄かった当時としては、画期的な最新設備が備わってたんですよね。避雷針や防火壁、スプリンクラーに相当する水道管もあったとか(※4)
博士:おかげで、「模範倉庫」って誉められちった。
助手:せんせがやった訳じゃないっしょ!
とはいえ、歴史的にも建築学的にも価値の高い赤レンガ倉庫、記念すべき第一回に紹介できて良かったっすね。(しみじみ)
博士:うむ。
倉庫設計者の意を引き継ぎ、リニューアルした新居氏(※5)の建築的工夫や試みも面白いぞ。倉庫らしさを損なわないような「保存&再生」の工夫が施されておる。さ、中へ入ってみてみよう。
助手:入り口は、ただのガラス扉っすね。
博士:おいおい。大きなガラスを一枚板で使用するのは、とても難しいんじゃぞ!上の丸い金属部(サラボルト)を見よ!
支える部分に直接ガラスを取り付ける接続方法(DPG)である。相当なテクなんじゃ。(※6)
助手:あー。
博士:これも、余計な装飾せず「倉庫」らしさを引き立たせる演出なのじゃ。次は、君のコレじゃ。(小指をたて、足踏みを始める博士)
助手:おんな?かのじょ?ゆか・・ちゃん?あー床!!!(※7)ぢゃねぇっ!!プライベートな比喩出しても読者にはわかんねーだろ、シンプルに言えよ!
博士:ぢゃ、床。レンガ(※8)。鉄(※9)。通路(※10)。あと、柱、床下(スラブ)・・・
助手:ま、待ってぇ。あ゛〜もう!申し訳ありませんでした。1つ1つ解説をお願い致します。
博士:ま、『知っとけ!ツウ情報』見ておくれよ。
助手:まぢ!?そんな横着ありっすか。ったくもぉ、せめて、この光る階段のコトは教えて・・・
博士:おぉイイねぇ。君、階段の「先」こそ倉庫内最高の見所じゃよ。
助手:たしか3Fまで一気に繋がってるんですよね。
博士:この階段こそ、新居氏の象徴じゃ。割れやすく扱いづらいガラスを敢えて用い、人々の往来(賑わい)が透けて見える一体感のある空間を作り出しておる。一段一段ライトアップされた階段を上ると、そこはダイニングレストラン「BEER NEXT」。(※11)高い天井と華やかなライトで、倉庫が現役で活躍していた賑やか貿易時代をイメージさせる、もっとも赤レンガ倉庫らしいスペシャルな場所じゃ。きみ、建築学研究のためじゃ入るぞ。
助手:やっぽー。歩いた後の一杯はウマイっすよね。せんせ、次回も赤レンガ来ましょうよ。隣りの「chano-ma」って和カフェも気になるし、カクテル飲みながらライブも楽しめる「Motion Blue」もまだ見てませんよぉぉおお。(※11)1F(※12)の「YOKOHAMA BASHAMICHI ICE」も「鎌倉ハムキッチン・カーチス」も「崎陽軒 菜演房」も「Cafe-Creperie Ti Breizh」も「a cup of Drink Bar」も「横濱たちばな亭」も「KUA `AINA」も「Cafe Madu」も「sumire.」も!あーまだまだいっぱい行きたいお店があるのにー!
博士:おいおい、最後は食い意地かよ。
ってな感じで、初回は終わり!次回をお楽しみに!!

今週の建材

レンガレンガ
赤レンガ倉庫は、創建当初の4種類のレンガで作られていた。地中には「焼過」地上階表面には「磨き」室内には「並上」窓台には「鼻横黒」。レンガ素材の性質を活かし使い分けているのだ。例えば「鼻横黒」は堅く耐久性に優れているので、窓台に使用。文字通り通常のレンガより黒いため、デザインにも計算され用いられている。大きさはいずれも縦10.9cm×横22.5cm×高6.16cm。
予断ではあるが、1992年改修期、補完用に使用されたレンガは、なんと中国産。現在の日本産は加工精度が高すぎ、古いレンガとの「見た目」のギャップがありすぎるため、わざわざ取り寄せたという。また、強度が悪い中国産レンガを使用するにあたり、構造上の耐震性を高めるため、(通常モルタルのところ)粘度の高い樹脂で目地(レンガとレンガの接着面)を埋めそうだ。しかも全12万箇所。たかがレンガ、されどレンガ。建材って意外と奥深いです。



無駄demo知識

赤レンガ倉庫は函館にもある。ちなみに大阪にもある。ついでに、赤レンガ倉庫をデザインした限定・缶ビールもあるそうだ。


今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

Q:上空の壁に扉が!この扉はなんの扉?

A:扉の奥は、なんと当時の機械室。倉庫内にある荷物を運ぶための滑車やクレーンが入っていたそうだ。現在でも空調管理などのコンピュータ制御室として使用している。


補足de知識

※1 1号倉庫と2号倉庫
1992年3月、流通網の変化から使用されなくなっていた赤レンガ倉庫を、横浜市が国から買収。『港の賑わいと文化を創造する空間』を基本コンセプトとして改修工事を開始した。2棟ある建物のうち、小さい方の1号倉庫は文化施設としてホール・展示スペース・資料館などを設置。また、大きい方の2号倉庫は、飲食をはじめ様々な店舗が立ち並ぶ総合ショッピングモールとして生まれ変わり、現在に至る。

※2 レンガ倉庫のかわら
1906年創建当初は、三河産の瓦を使用。「三州 菊 撰製請合 横濱港四 安井仕入」などの刻印もみられる。瓦1枚の大きさは、通常より小さめの小間八寸(長さ28cm×幅27.5cm現在では64版と呼ばれている)。64枚でちょうど1坪に相当するサイズだそうだ。

※3 倉庫設計者・妻木頼黄
東京駅舎で有名な辰野金吾と並ぶ、明治2大建築家の一人。ニューヨーク州コーネル大学で建築学を学び、ドイツへ留学。その後、明治政府の官僚建築家として1899年、上屋、倉庫、起重機、鉄道等を完備した本格的な港湾設備工事となる「横浜税関海陸聯絡設備工事」を指揮。1906年その工事の一環として、現赤レンガ倉庫つまり「第一号倉庫」、「第二号倉庫」を手がけた。彼の他の作品には、旧横浜正金銀行本店(現県立歴史博物館)や、北九州市の門司税関などもある。

※4 完成された煉瓦構造
レンガ建築といっても、レンガのみを積み立てて作っているわけではない。レンガ壁の中に、縦横に鉄骨が組まれており、耐震も考慮された構造となっている。実際、倉庫は関東大震災にも第二次世界大戦の空襲にも耐え抜いた。

※5 The First Machine age(第1機械時代)新居千秋の挑戦
1992年横浜市より赤レンガ倉庫を改装・改修するための建築プロジェクトを任されたのが、建築家・新居千秋であった。彼は、倉庫が建築された明治末期から大正初期にかけての"古き良き時代"の人々が持っていた、何かを生み出す創造のスピリッツを重視。コンセプトを「The First Machine age=第1機械時代」(倉庫が誕生した時代の建築用語)とした。そこで、倉庫の内装には、(誕生した時代にも存在していた)鉄とガラスだけを、なるべくそのままの姿で使い、余計な装飾を省いたりエスカレーターの機械部がスケルトンで見えるような工夫を凝らしている。

※6 スケルトン扉
新居氏のコンセプトに添って、ガラス板をそのまま利用。

※7 倉庫ちっくな床
店舗の床としてはあまり使用されない、簡易的な仕上げのコンクリートで、倉庫床を演出。ケッコー、固い。

※8 レンガとレンガタイル
右レンガ。左レンガタイル。レンガ壁の統一感を持たせるために、レンガタイルを多用。
一見じゃわからないので、近づいて見てね。

※9 剥き出しの天井・防火扉
ライト・ダクトなど天井には、管が縦横無尽に走っており、通路には重層な扉がある。鉄製で重い扉をスムーズに開閉させるための戸車が、印象的。倉庫らしさのシンボルとして復元され、現在も防火扉として活躍している。

※10 狭い通路
倉庫内の通路は、通常より若干狭く作られているようだ。これは倉庫らしい間取を生かし店舗面積を増やすためと、倉庫内をわざと"にぎわい"を感じさせる仕掛けなのだ。

※11 2号倉庫3Fおすすめ店舗
●「Beer Next」 lunch 11:00-16:00 dinner 16:00-23:00 tel 045-226-1961 
個室アリ。ひとり予算 lunch1100〜 dinner3500〜 オリジナルビールとマグロとアボカドのタルタル 950円など旬の創作料理が絶品。
●「chano-ma」(和カフェ)
11:00-24:00(金土祝前日のみ5:00まで) tel 045-650-8228(予約不可)
個室アリ。ひとり予算lunch1000〜 dinner2000〜 「21世紀のお茶の間」をテーマに、心地よい和空間を演出。和菓子系スウィーツでまったりと。
●「Motion Blue Yokohama」
平日17:00-24:00 土日祝11:00-24:00  tel 045-226-1919
ライブチャージあり 詳しくはwww.motionblue.co.jp ベイブリッジを眺めつつ音楽とカクテルに酔う。そんなロマンティックな夜をどうぞ。

※12 2号倉庫1F・おすすめの店
●「YOKOHAMA BASHAMICHI ICE」
11:00-20:00 tel 045-650-8707
ひとり予算 380〜 明治の風味を活かした「カスタード」が絶品。
● 「鎌倉ハムキッチン・カーチス」
11:00-21:00  tel 045-650-8787
ひとり予算 800〜 骨付きハムの切り立てのハムの旨さにびっくし。サンドウィッチでほおばろう。
● 「崎陽軒 菜演房」
11:00-21:00  tel 045-650-8761
ひとり予算 800〜 シェフご自慢の"豚トロやわらか煮"本場中国の味をご賞味あれ。
● 「Cafe-Creperie Ti Breizh」
11:00-21:00  tel 045-650-8766(予約不可)
ひとり予算 1000〜 そば粉100%の食事クレープ"ガレット"一度食べたら病みつきの食感です。
● 「a cup of Drink Bar」
11:00-21:00
ホンモノを気軽に手ごろな価格で楽しめるドリンクベンダー(バー)。
● 「横濱たちばな亭」
11:00-21:00  tel 045-650-8752
ひとり予算 850〜 地鶏を使った半熟トロトロ卵とデミグラスソースが絶妙!感動オムレツライスですよ。
● 「KUA `AINA」
11:00-21:00  tel 045-227-5300
ひとり予算 1,000〜 ハワイで大人気のグルメバーガー!ボリューム大で満足度大です。
● 「Cafe Madu」
11:00-23:00  tel 045-650-8708(予約可)
ひとり予算lunch1200〜 dinner2500〜 海を眺められるテラス席で、美味しい料理とワインをどうぞ。
● 「sumire.」
11:00-23:00  tel 045-640-1380(ディナーのみ予約可)
ひとり予算lunch1500〜 dinner3000〜 評判のサーモングリルは、g単位でオーダーしよう。



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≫vol.03 鎌倉・円覚寺
≫vol.04 多摩・コカ・コーラ多摩工場
≫vol.05 国会議事堂
≫vol.06 会津・大内宿
≫vol.07 黒部ダム
≫vol.08 草津温泉郷
≫vol.09 ベイブリッジ
≫vol.10 小江戸・川越
≫vol.11 浜離宮恩賜庭園
≫vol.12 東京大学
≫vol.13 東京駅
≫vol.14 銀座
≫vol.15 等々力
≫vol.16 江の島
≫vol.17 横浜中華街
≫vol.18 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その1
≫vol.19 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その2
≫vol.20 幕張ベイタウン
≫vol.21 横浜ベイサイドマリーナ
≫vol.22 浅草・仲見世通り
≫vol.23 東京都庁
≫vol.24 東京湾アクアライン・海ほたる
≫vol.25 横浜港大さん橋国際旅客ターミナル
≫vol.26 総集編 長い散歩のあとに・はかせインタビュー





◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:たばたひろえ