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2004.01.14
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 「銀座」

vol.15 渓谷と古墳群の広がる憩いの場「等々力」
東京急行大井町線・等々力駅下車徒歩2分(等々力渓谷)。
東京急行東横線・多摩川駅下車徒歩3分(多摩川台公園)。
お薦め散歩コース:等々力駅→等々力渓谷→等々力渓谷三号横穴式古墳→不動の滝→多摩川→グランド小池商店(休憩)→多摩川台公園→宝来山古墳→亀甲山古墳→古墳展示室→多摩川駅(所要時間:約3時間。)

助手: う゛〜、しっかし寒い朝ですねー、はかせ。
博士: ・・ぼばよう・・・
助手: ちょっと、いきなりこっちまで不幸になるようなその、ローテンションやめてくださいよ!見るからに二日酔いじゃないっすかぁ。
博士: 正月気分がまだ、抜けなくて・・
助手: ったく、始めますよ!はかせ、とどろきと言えば・・・
博士&助手:『くるまくるまくるま・・くるま3っつで〜!』
助手: こういうときのノリだけはいいですねー。この等々力には都区内唯一の渓谷(※1)があるんですよ。早速、探検行きましょう!
博士: ほほう、ここも親水公園(※2)の一種じゃな。
助手: 親水公園は人工的に造ったものばかりじゃないんですね。澄んだ空気に川のせせらぎ。きもちイイ〜。
博士: この渓谷は護岸にも特徴がある。丸石を使っている部分は昔からのスタイル、あっちの大きな岩はわりと最近の設置と思われるぞ。
助手: 河川や堤防の浸食を防ぐための役割があるんですよね。でも、水量のわりには随分と高さのある護岸だと思いません?
博士: この先の『不動の滝』は、今でこそ小さな滝だが、かつては役の業者ゆかりの霊場だったんじゃ。さらーに、ここで明日使えるトリビアをキミに授けよう!この、涸れることなく流れ落ちる滝の音が響きわたり、「轟いた」ことからこの地を等々力と呼ぶようになったそうじゃ!
助手: へぇ〜、へぇ〜、70へぇっスね。
おおっと、はかせこの先に古墳があるそうですよ!
博士: それは「等々力渓谷三号横穴式古墳」である!古墳時代末期から奈良時代にかけてのものと推定されておる都指定史跡で谷沢川の東側に群集する横穴のひとつなのだ。須恵器や金銅製耳環なども出土されておるぞ。ちなみに出土ナンバーは、えーっと・・・。
助手: はかせ危ない!ガッツ石松虫がっ!・・・って、おい!『トリック』観すぎっ!
博士: この等々力渓谷をはじめ、多摩川下流域に沿った左岸地域には重要な古墳群がいくつも点在しておるんじゃ。前方後円墳見たい?
助手: 見たーい!
博士: ではルート変更!多摩川に出る前に、この辺りの重要な古墳群を調査に行くぞ。まずは多摩川台公園(※3)!
助手: こんな田園調布の高級住宅街に古墳が集まってるなんて、なんか想像できませんね。
博士: 河岸や水辺での生活のほうが、当時から利便性が多かったということだろうな。ところで、いまワシらの立っているこの小山もじつは古墳なのだ。
助手: ええっ!?はかせ、早く言ってくださいよ!まだ、心の準備が・・・でも、これが古墳なんですか?
博士: 芝公園にある「丸山古墳」と並び、都内で最も有名な「亀甲山古墳」である!
助手: んー・・残念ながら古墳って、あんまりすごみが感じられませんねぇ。
博士: 遺跡とはちがって、ただの小山にしか見えないからな。どんなに権威のある人物が埋葬されていたかは、古墳の大きさや出土品から推測するしかないしな。
助手: でも、きっとさぞかしお金持ちの首長だったんでしょうね。なんたって田園調布に古墳造らせちゃうんですから。
博士: そう、ワシも芦屋辺りにどーんと、どデカいのを建設予定!
助手: ・・・非難あびますよ、確実に。ややっ、眼下に多摩川っすよ!タマちゃん探しに行きますか?もう古い?
博士: あれだけ騒いだわりにはもう、だれも追っかけてないのか。かわいそうなタマちゃん、カンバ〜ック!
助手: 叫ぶな〜!! しかし、真冬の河原は冷えますねー。熱燗が恋しい・・。
博士: 「え〜、おでんに熱燗いかがっすか〜?」(ややダミ声)
助手: え!?あるの、こんな川岸に?
博士: ウソ!?『小池商店』(※4)を知らないとは、あぁ、なんて罪なヤツ。あのワンちゃんにチョーさんも足しげく通った名店だというのに・・・。
助手: まま、一杯いきましょうよ。冷えた躰にアツアツのおでん!
博士: 我が栄光の巨人軍!それにタマちゃん、カンバ〜ック!!
助手: だから、叫ぶなって!!

おでんと熱燗に惹かれて行ってしまったところで今回はおしまい。次回もお楽しみに!

今週の建材

景観を損なわない擬木景観を損なわない擬木
擬木とは樹木の幹に似せてコンクリートや石でつくった資材のこと。セメント製で鉄筋を骨組みにしているものもある。景観を損ねないための工夫がなされている。新宿御苑内にある日本最初の擬木の橋は、明治38年にフランスから取りよせたものだとか。


無駄demo知識

○渓谷入口に架かる「ゴルフ橋」は、昭和14年まで経営していたゴルフ場に向かうため、この場所に造られた。
○渓谷の中程にある湧き水は、等々力不動尊の境内にも引かれ手水舎として利用されている。東京都の水質調査では例年良好とのことだが、要煮沸が望ましい。



補足de知識

※1 等々力渓谷

武蔵野台地の南端に位置する延長約1キロに及ぶ都区内唯一の渓谷。谷沢川が多摩川と合流する手前で国分寺崖線を浸食してできた。川底から10メートルほどある段丘の斜面にはケヤキ、シラカシ、ムクノキといった武蔵野を代表する巨木が生い茂り、都心にいることを忘れさせてくれる空間です。
左:小川のせせらぎが気持ちいい、憩いの場
中:渓谷中程の特徴的な護岸
右:この先から流れ落ちる不動の滝

※2 親水公園
下水道の整備により不要になった河川を水と親しめる場所によみがえらせたもので、人と水とが親しむことに着目した考え方。水辺での散策や休息を目的とした施設。

※3 多摩川台公園

多摩川に沿った丘陵地に位置する約66平方メートルの自然公園。園内には、この地域で最古の前方後円墳『宝来山古墳』、反対側には『亀甲山古墳』が位置している。このふたつの前方後円墳は向き合って造られており、その間に連なる8つの小円墳とともに多摩川台古墳群と呼ばれている。園内の古墳展示室では多摩川台古墳群がひと目でわかるマップをはじめ、横穴式石室を再現した模型、出土品のレプリカなど貴重な文化遺産に触れることができる(入室無料)。
左:散歩道に沿った左側が古墳
右:見逃さないためにちゃんと看板が建ってます。

※4 グランド小池商店

王・長島をはじめとする往年の巨人軍選手御用達のおでんやさん。店内の壁面いたるところに往年の名選手らのサインが並ぶ。創業以来変わらぬおでんの味には店主・小池まつさんの愛情と優しさが、じんわりしみ込んでいる。
左:壁一面に並ぶサイン
右:名物のおでん一皿400円
大田区田園調布4-46-10
TEL:03-3721-3233
営業時間:10:00〜18:30(月曜・第3火休)


今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

今週の「ツウ」快ふしぎ発見!
大雨や洪水による水の逆流を防ぐため、排水溝にフタがついている。下流に流れる川の水圧でフタが閉まる仕掛け。このほか等々力渓谷の護岸には大小様々なフタが付けられている。


散歩de探訪録

≫vol.01 横浜・赤レンガ倉庫
≫vol.02 お台場・ビーナスフォート
≫vol.03 鎌倉・円覚寺
≫vol.04 多摩・コカ・コーラ多摩工場
≫vol.05 国会議事堂
≫vol.06 会津・大内宿
≫vol.07 黒部ダム
≫vol.08 草津温泉郷
≫vol.09 ベイブリッジ
≫vol.10 小江戸・川越
≫vol.11 浜離宮恩賜庭園
≫vol.12 東京大学
≫vol.13 東京駅
≫vol.14 銀座
≫vol.15 等々力
≫vol.16 江の島
≫vol.17 横浜中華街
≫vol.18 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その1
≫vol.19 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その2
≫vol.20 幕張ベイタウン
≫vol.21 横浜ベイサイドマリーナ
≫vol.22 浅草・仲見世通り
≫vol.23 東京都庁
≫vol.24 東京湾アクアライン・海ほたる
≫vol.25 横浜港大さん橋国際旅客ターミナル
≫vol.26 総集編 長い散歩のあとに・はかせインタビュー



ライタープロフィール

◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:平野星良(ひらのせいら)