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2003.12.24
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 「東京駅」

vol.13 赤レンガのセントラルステーション「東京駅」
開業年月日:大正3年12月20日
線区名:内房線、京浜東北線、京葉線、総武線快速、総武本線、外房線、
 中央本線、東海道本線、成田線、山手線、横須賀線、
 秋田・上越・東北・長野・山形新幹線、営団丸の内線
JR東海:http://www.jr-central.co.jp/  JR東日本:http://www.jreast.co.jp/

助手: はかせ、さすが朝の東京駅はビジネスマンで賑わってますね。
博士: 24時間はたら〜けますか♪ビジネスマァ〜ン♪
博士&助手:ビジネスマァ〜ン♪・・・
助手: てな、リゲインCM時代がまだ生き残ってるみたいっすねー。さすが東京駅!総面積約17万平方メートル、1日の乗降客数およそ40万人。まさに日本のセントラルターミナルですね。
博士: まずは丸の内口、この八角形ドーム(※1)を観よ!この美しい流曲線、フィレンツェのドゥオモを彷彿させるわぃ!建設当初はそりゃもう、絢爛豪華で四隅の窓に青龍、朱雀、玄武、白虎の四神をデザインしたステンドグラスがはめ込まれていたのぢゃ(持参の資料をチラ見)。
助手: ・・さ、さすが博識が高い!(複雑な気分)。ところではかせ、ここ八角形ドームの支柱、それに床のタイルも八角形。気づけば、“八角形しばり”じゃないっすか。WHY?
博士: 設計が着手された1900年代初頭といえば、当時の欧州の流れは幾何学模様にシンメトリー。イギリス帰りの辰野金吾(東京駅設計を担当(※2))の、濃厚な西洋色が感じられるわい。外観の赤レンガ造りなど、まさしく当時イギリスで流行していたスタイルなのだ。
助手: まさに、イギリス万歳ですね。
博士: ゴッド・セーブ・ザ・クイーン!
しかし、そればかりではないぞ。西洋からの脱却、日本レンガ積造の確立を目指した辰野はただ、赤いレンガを敷きつめるだけでなく、その間に白い石を帯状に配した。さらに、支柱を増やすことで外壁の厚さを減らし、地震による被害を最小限に抑えるなど、日本特有の風土に合致した建築構造に切り替えたのじゃ。
助手: ニッポンの魂ここにありっすね。
博士: 辰野もお箸の国のひとってこと!
助手: チョップ“ステキ”ッス(笑)
ところでドーム下の窓縁を歩く人たちが見えますが。
博士: ふむ、周囲の窓は東京ステーションホテル(※3)の客室じゃ。ホテル内のバーOakには開業当初の煉瓦も残っておる。正統派フランス料理「ばら」もいいぞぉ。
助手: 丸の内ビジネス街を眺めながらランチってのもいいですね。
博士: では、視察ということで。いざ!
助手: おぉ、このエレガントなビロードのカーペット、吹き抜けの高い天井!クラシック感漂うエントランス!
博士: 幾人もの文豪たちがこのホテルを愛し、部屋から見下ろす改札口の様子を川端康成は小説の場面に登場させておるぞ。(※4)。
助手: 歴史ある風情をそのままに営業しているのがいいですね。
博士: このドアノブやスイッチカバーなど、細部のデザインにもこだわっておる。
助手: 駅舎と共に今年、重要文化財に指定されそうですね。
博士: そう、ワシも来年には無形文化財だな。
助手: そうそう・・・って、ツッコむのもアホらしくなるようなこと言わないでくださいよ。

助手が呆れて行ってしまったところで今回はおしまい。次回もお楽しみに!

今週の建材

ドームを支える素材・ジュラルミン
ドームを支える素材・ジュラルミン 戦災後、焼け落ちたドームの復元に用いられた素材がジュラルミン。この軽くて頑丈な素材、なんと「ゼロ戦」の廃材を利用したもの。アルミニウム合金で強度が高く、鋼材(スチール)などに匹敵する強度を持っている。それでいて鋼材より比重が軽いためドームの素材に適していたと考えられる。


無駄demo知識

○JR東日本とJR東海の2社で運営してるため、東京駅にはそれぞれの東京駅長がいる。
○銘菓・ひよ子、生まれは九州の福岡。東京オリンピックの年に東京へ進出したのが最初。
○東海道本線東京駅の四季弁当(720円)も八角形の容器。



補足de知識

※1 赤レンガ造りの丸の内側駅舎

全長330メートルに及ぶ巨大建築は、6年半の歳月をかけ大正3年(1914)に開業。建設当時3階建だった駅舎は、威風堂々たる外観ばかりでなく、美しい内観の装飾が高く評価され「さながら宮殿のごとし」と称されるほどだった。しかし昭和20年の東京大空襲により被災、華麗な丸屋根ドームは炎上。物資が不足する中での復旧のためドームは角屋根に、3階部は撤去され現在の2階建てに。

※2 設計者・辰野金吾(1854〜1919)
佐賀県唐津市生まれ。横浜赤レンガ倉庫設計者・妻木頼黄と並び称される明治時代の建築家。明治12年工学大学校を首席で卒業後、ロンドンへ留学。建築過程および美術過程で学ぶかたわら建築会社や有名建築家のオフィスで研修生として実務を学ぶ。
中央停車場(後の東京駅)の設計を依頼されたのは明治36年。その他、日本銀行も辰野の設計。日銀の各支店をはじめ全国規模で建築設計を展開した。

※3 隣接する東京ステーションホテル

東京駅開業の翌年(1915)、駅舎の一部を使ってオープン。駅舎と同じく3階建てだった。駅舎と共に2003年重要文化財に指定される。
左: 丸の内改札口外、ステーションギャラリーに隣接する入口。
中:皇居を望むクラシックな一室。
右:Bar「Ork」に残る建設当初の赤レンガ。

※4 多くの文豪に愛されたステーションホテル
江戸川乱歩、川端康成、松本清張ら数々の文化人から愛された。現在も宿泊可能な317号室では、川端康成がカンヅメとなり、小説「女であること」を執筆したとされている。原節子主演で映画化されたこの小説により、当時、女性の宿泊客数が増加した。

東京ステーションホテル
東京都千代田区丸の内1-9-1
TEL:03-3231-2511(宿泊)03-3231-3511(宴会)
http://www.tshl.co.jp
・ フランス料理「ばら」11:00-22:00(LO.21:00)
・ Bar「Ork」17:00-23:00


今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

今週の「ツウ」快ふしぎ発見! 『日本の鉄道の父・井上勝像』
ステーションホテル内1階のエレベーター脇には、東京大空襲の際に焼けこげたレンガ内の支柱が、今でもそのまま残っている。昨年、エレベーター設置工事時に壁面を削り出したところ発見された。戦災の激しさが想像できる得難い遺産だ。


散歩de探訪録

≫vol.01 横浜・赤レンガ倉庫
≫vol.02 お台場・ビーナスフォート
≫vol.03 鎌倉・円覚寺
≫vol.04 多摩・コカ・コーラ多摩工場
≫vol.05 国会議事堂
≫vol.06 会津・大内宿
≫vol.07 黒部ダム
≫vol.08 草津温泉郷
≫vol.09 ベイブリッジ
≫vol.10 小江戸・川越
≫vol.11 浜離宮恩賜庭園
≫vol.12 東京大学
≫vol.13 東京駅
≫vol.14 銀座
≫vol.15 等々力
≫vol.16 江の島
≫vol.17 横浜中華街
≫vol.18 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その1
≫vol.19 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その2
≫vol.20 幕張ベイタウン
≫vol.21 横浜ベイサイドマリーナ
≫vol.22 浅草・仲見世通り
≫vol.23 東京都庁
≫vol.24 東京湾アクアライン・海ほたる
≫vol.25 横浜港大さん橋国際旅客ターミナル
≫vol.26 総集編 長い散歩のあとに・はかせインタビュー



ライタープロフィール

◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:平野星良(ひらのせいら)