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2004.01.21
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 「江の島」

vol.16 信仰と観光の島を歩く「江の島」
小田急線・片瀬江ノ島駅下車徒歩15分
湘南モノレール・湘南江の島駅下車徒歩18分
江ノ電・江ノ島駅下車徒歩25分
神奈川県藤沢市江の島1-2丁目

助手: 江ノ電もいいけど、冬の海のドライブ気持ちいいっすね。
博士: よく学生の頃は、車飛ばして冬の海に来たもんだ。しかもひとりで。この「ひとり」ってのがまた、いいんだなぁ〜感傷に浸ったりして、ウフッ・・。
助手: 「ウフッ・・」じゃないっすよ、気持ちわるい!寂しい学生時代を露呈してるだけじゃないっすか。どうぜサザンとか聞きながらでしょ?
博士: うぉ〜、見よ!目の前に江の島&富士山!絶景ぢゃ〜!ナンマンダブ・・
助手: ちょっと!!ハンドルは握ってくださいよ!
博士: 冗談冗談(笑)。ところで、ちゃんと今回の目的地「江の島」ついて勉強してきておるのか?
助手: もちろんッスよ!江の島の海開きは毎年7月1日。毎年恒例の花火大会は今年から8月の第一火曜日。それから名物は「印籠もなか」に「ウミガメ焼き」、「江の島丼」はサザエの卵とじ丼!
博士: うーん上等。江の島は鎌倉・室町時代には信仰の島(※1)だった。頼朝も家康も盛んにこの島を訪れている。それに江の島の弁財天は安芸の厳島、近江の竹生島とともに日本三大弁天のひとつなんじゃ。
助手: 早速、弁天橋(※2)を渡って江の島弁天から行ってみましょう!はかせ、この鳥居ずいぶん年期が入ってますね。
博士: 最初に創建されたのは延享4年(1747)。現在の青銅の鳥居は文政4年(1821)に再建されたもので、200年近く潮風に耐えておる。
助手: 柱の名前は寄進者たちのものですね、この時代の信仰の深さが伺えますね。さて、参道を上がっていくと・・・。お、江の島神社入口です。
博士: ここからはエスカーを利用する。
助手: はかせ〜、歩いて行きましょうよ。ほら、おばちゃんたちも山道上がっていってるじゃないっすか。こんな寒いのにうっすら額に汗してんのはかせぐらいっすよ。
博士: いーの。このエスカーも江の島特有の交通手段なんだから。ほれ見ろ、こうやって岩山をくりぬいてエスカレーターを通しておるんじゃ。
助手: ほぇ〜。
博士: 弁財天のある辺津宮、八坂神社をぬけて中津宮を上がると・・、ここがサムエル・コッキング苑と展望台(※3)じゃ。
助手: 昨年、江ノ島電鉄創業100周年記念事業としてこの展望台も建て替えられたんですよね。
博士: 海抜119.6メートルの絶景、いっときますか!?
助手: すごーい!伊豆半島に箱根の山々、大島そしてフジヤマ!360度完全パノラマ!!お天気中継に出てくる場面そのものっすね。
博士: 相模湾に沈むサンセットをここから眺める。あぁ、なんてスイートなひととき・・。
助手: 今年こそはいい人、見つかるといいですね、はかせ。
博士: 今年こそ龍恋の鐘を鳴らしてみせるぞぅ!
助手: 恋人で鳴らすと、ふたりはけっして別れることがない・・。ロマンチックじゃありませんか!でもはかせ、男ふたりでこの場所って、なんか気まずくない?
博士: とても居心地が悪い・・向こうのカップルも不信感丸出しの表情しとるし。退散すっべ!
助手: そうすっべ!
博士: いよいよ江の島の裏側まで来たぞ。ここから先が岩屋(※4)である。波の浸食による自然洞窟なんじゃ。
助手: 関東大震災にも耐えた屈強な岩盤も波には勝てなかったんですね。
博士: 「シリーズ最大の危機が襲う!江の島の奥地、古代裸族に人類の原点を見た!」よーし、いざ探検!
助手: それって水曜スペシャルもののパクりっすよね。川口浩っすか?藤原っすか?
博士: 早速、謎の微生物発見!!まさかピラニア!?
助手: 金魚っぽくないですか?
博士: 「神秘の池」に金魚、これこそが神秘なのだよ。
助手: この辺非常に低いですねー。あれ、突き当たりましたよ。
博士: そこの寝婆石が祀られている先からひんやり空気を感じないかね?昔からこの風穴は富士山に通じていると伝えられておるんじゃ。
助手: これも信仰心の現れですね。んー、江の島奥が深い!
博士: う、いかん。ゆっくりあちこち見て回ったらロウソクが今にも消えそうではないか!
助手: あれれ、はかせ、ちーとビビり入ってません?
博士: いま馬鹿にしたろ。な、馬鹿にしたろ?くそ、こうしてやる「ふっ・・」
助手: あーはかせ!!ボクのも消えちゃったじゃないですか〜!どうやって外に出る気ですか?
博士&助手:ノ〜〜〜ッ!!

二人の行く末が危うくなったところで今回はおしまい。ふたりが無事に脱出できたら次回もお楽しみに。

今週の建材

ポリカーボネートで強風を遮断!
ポリカーボネートで強風を遮断! 紫外線や太陽光熱につよいプラスチックの一種で、その特性から屋外に使われることが多い。OA機器のディスプレイカバーのほか車のヘッドランプやテールランプのレンズにも使用されている。強風が通り抜ける「山ふたつ」では、風よけのパネルとしてしっかりと風を遮断し、特徴が活かされている。


無駄demo知識

○日本全国には他にもたくさんの江の島がある。江ノ島、江之島、榎島など書き方は違うが地図上に記されているだけでも16のエノシマがある。
○旧江の島展望台が造られたのは昭和25年(1950)だが、これはもともと二子玉川にあった落下傘練習塔を江の島の灯台として移設したものである。
○旧二見館の跡地1500メートルの地下から平成14年4月に温泉の源泉が発見された。今年の7月のオープンを目指し、日帰り入浴可能な総合的スパ施設が江の島に誕生する予定。



補足de知識

※1 江の島の歴史

江の島と対岸の片瀬側とつながっていたおよそ2万年前、沈降運動により島として陸から離れたと推定されている。江の島が干潮時に渡れるようになったのは建保4年(1216)だといわれている。建久元年(1190)北条時政がこの地を参籠した際、龍の化身の女が現れ、子孫繁栄を北条に告げ姿を消した。その場に残された3枚のウロコから、北条家「三鱗」の家紋はつくられたという。慶長5年(1600)徳川家康は下関からの帰路、江の島に立ち寄る。徳川国光こと水戸黄門さまもこの地を参詣に訪れている。また、歌川広重をはじめ多くの浮世絵、風景画に江の島は登場する。相州江ノ嶋岩屋之図(歌川広重)はその代表的作品。

左:歴史が刻み込まれた青銅の鳥居
中:北条家「三鱗」の家紋は江の島の至るところで用いられている
右:エスカーを乗り継いで行けば辺津宮まで一気に登ることができる

※2 江の島弁天橋

江の島に最初に橋が架けられたのは明治24年(1891)のこと。木造の橋は台風のたびに崩壊し流されてしまう。そこで昭和24年(1949)橋桁を鉄筋造りにした大橋が完成する。現在のようなコンクリート建設の橋に生まれ変わったのは昭和33年。6年後の東京オリンピックでヨット競技の会場として江の島が使われることが決定。これに伴い、弁天橋の隣に平行して車専用の江の島大橋が誕生した。

左:参道へと続く江の島の入口
右:片瀬側に向かって延びる弁天橋

※3 サムエル・コッキング苑

この地は古くから金亀山与願寺に所属して、神仏に捧げる供物や食前に用いる野菜を作る供御菜園だった。明治15年(1882)よりイギリス人サムエル・コッキングが神社より買い受け住居と植物園を造った。しかし関東大震災により温室をはじめ家屋のほとんどは倒壊してしまう。昭和24年より藤沢市の整備の末、一般公開されるようになった。2002年4月植物園の改修と展望台の建て替えの際、遺跡の調査が行われた。園内からは縄文時代前期のものと見られる土器や石器など1万点余りが出土した。リニューアルした展望台の高さは海抜119.6メートル。室内から360度のパノラマを楽しめる。旧展望台の台座部をそのまま利用した郷土資料館では、懐かしい展望灯台の巨大ランプや模型に出会うことができる。(サムエル・コッキング苑入場料200円、展望台にエレベーターで上がるとプラス300円)

写真:コッキング苑と新展望台。富士山の眺望がすばらしい。

※4 岩屋

波の浸食によってできた江の島の岩屋は古来より信仰の対象として親しまれてきた。寿永元年(1182)源頼朝をはじめ47人の武士が文覚上人とともに戦勝祈願を行ったことが岩屋に最初に入るきっかけとなったとされている。その後浸食による落石のため閉鎖された時期もあったが、現在では第一、第二岩屋と見学が可能。なお、第二岩屋の先にある龍窟は現在も波の浸食により洞窟が先へと伸び始めている。入場料500円。

左:岩屋へと続く遊歩道。相模湾からの風が心地よい。
中:第一岩屋から第二岩屋へ。そそり立つ一枚岩に圧巻。
右:潮の満ち引きで見え隠れする亀石。竜宮城へ連れて行ってくれる!?


今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

今週の「ツウ」快ふしぎ発見!
・・・音はどこから聞こえてくる?
岩屋洞窟内のちょっと過剰的な波の効果音。一体この音、どこから聞こえてくるのかと思えば・・・。なんと、GRC(耐アルカリガラス繊維強化セメント)で岩を模した模型を造り、そのハコの中にスピーカーを隠してあるんです。岩場に砕ける波の音が岩窟の奥まで轟いているような気にさせてくれます。


散歩de探訪録

≫vol.01 横浜・赤レンガ倉庫
≫vol.02 お台場・ビーナスフォート
≫vol.03 鎌倉・円覚寺
≫vol.04 多摩・コカ・コーラ多摩工場
≫vol.05 国会議事堂
≫vol.06 会津・大内宿
≫vol.07 黒部ダム
≫vol.08 草津温泉郷
≫vol.09 ベイブリッジ
≫vol.10 小江戸・川越
≫vol.11 浜離宮恩賜庭園
≫vol.12 東京大学
≫vol.13 東京駅
≫vol.14 銀座
≫vol.15 等々力
≫vol.16 江の島
≫vol.17 横浜中華街
≫vol.18 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その1
≫vol.19 2週連続企画〜江戸東京たてもの園:その2
≫vol.20 幕張ベイタウン
≫vol.21 横浜ベイサイドマリーナ
≫vol.22 浅草・仲見世通り
≫vol.23 東京都庁
≫vol.24 東京湾アクアライン・海ほたる
≫vol.25 横浜港大さん橋国際旅客ターミナル
≫vol.26 総集編 長い散歩のあとに・はかせインタビュー



ライタープロフィール

◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:平野星良(ひらのせいら)