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2003.11.12
散歩 de 探訪 -街・たてもの 歩いて見える新発見- 「黒部ダム」

vol.7 世界最高峰!日本一の高さを誇るダム「黒部ダム」

長野方面より JR大糸線 信濃大町駅下車 バス40分+トロリーバス15分。
富山方面より 富山地方鉄道 立山駅下車→立山黒部アルペンルート
4月10日から11月30日までのみ開放。冬期閉鎖アリ。
(放水期間6月26日から10月15日まで)
9:00〜17:00 TEL:0261-22-0804
http://www.kurobe-dam.com/

博士: ♪つばーめよ、高い空から〜♪(みゆき調)
助手: 教えてよ〜黒部の見どころを♪というわけで、はかせ!今回は日本一の高さを誇る、黒部ダムですよ。
博士: うむ。今回の見どころは、言うまでもなく、このスケールじゃ。巨大コンクリートの壁を造り上げるのに、どんな苦労が。どんな歴史が、どんな想いが込められていたか想像するだけで…うぉおお(感動)(※1)
助手: そ、そんなにスゴイんですか…?
博士: きみぃ!暴言じゃぞ。まず、こんだけのコンクリート資材はどうやって運んできたのかね?豊かな水量と大きな落差で水力発電にはうってつけの場所じゃが、そこは「秘境」黒部渓谷。簡単に資材輸送できる道などない。そう、今では観光ルートになっているトロリーバスが通ったトンネル、あのトンネルはもともとは、資材運搬用に「わざわざ」掘られたものなんじゃ。
助手: ダム建設するのに、トンネルから建設!?
博士: トンネル開通にも苦闘秘話があってな…(ながなが)。
助手: えーっと、詳しくは石原裕次郎さんの映画「黒部の太陽」をご覧下さい。(※2)はかせ、はかせ!プレイバック黒部っすよ!!
博士: (ハッ)ダムは大きく3つの種類があるのじゃが、黒部ダムはアーチ式ドーム型で、ちょうどお椀を縦半分に割ったようなカタチをしておる。他のダム型と違って、貯水した水の圧力をお椀の曲線面で受け、うまーく左右に水圧を分散するような設計になっておるのじゃ。しかも、堅い岩盤を生かし製作部分を最小限に留めているので、建設工期も少なくリーズナブルって訳なのじゃ。
助手: はぁー。なんだか規模が大きすぎてピンと来ませんよぉ。
博士: ったくもう。高さ186m×長さ492m×幅8.1mってのは、例えるなら2車線道路の幅で、東京タワー大展望台(150m)より高く、コンクリートがドカンと立ててある感じ。
助手: ぢゃ、ここ(ダム上)から見える小石は…。
博士: もちろん巨大岩。
助手: あの小さな流木も…。
博士: もちろん巨木。
助手: 目の前のチビ博士も…。
博士: 偉大な建築家・羅針盤博士!という訳じゃ。
助手: んな、アホな!
とはいえ、ケタ違いのスケール感で、圧倒されまくりです。(※3)山々も美しいし…。
博士: 黒部ダム最後にして最大の魅力は自然かもな。黒部ダムは自然保護や景観に配慮して、黒部川流域にある4つの発電所は全て地下に建設されておる。また、台風など暴風雨になり貯水量が増えた場合は、ダムの左右の口から水を放流。水同士をぶつかり合わせることで、直接大量の水が川へ流れないよう、川底をえぐらないような「自然保護」設計がされているのじゃ。
助手: そーいえば、トロリーバスも電気で走ってましたね。
博士: 自然愛好家の我らには、うってつけの場所じゃのぉ。(うっとり)(※4)

博士と弟子が、立山黒部の雄大な自然にボォーっとし始めたところで今回はおしまい。次回もお楽しみに!

今週の建材

明かるい雨戸!?コンクリートあれこれ
コンクリートは砂、セメント、水と砂利を混ぜたもので、混ぜた後は始終かき回していないと混ぜ合わせたものが分離しちゃいます。そこで、生コン車はクルクルまわり、コンクリートは「生」と言われるのだ。(一般的には工場から1時間半以内で搬送するそーだ)ちなみにダムの場合、ダム堰には頑丈なものを、ダム堰下には「ミルク状」のゆるめのコンクリートが岩盤に注入され、岩盤からの水漏れを防ぐなど、コンクリートは使用される場所や役割により、原料の配分が変わる。


無駄demo知識

○映画「ホワイトアウト」のロケ地も、この黒部ダム!
○ダム側には湧き水が。冷たくて美味ですよ。
○トロリーバス発着駅から展望台まで、約200段もの階段が!これはビル10階分の階段に相当。そうとう疲れたけど、登る価値はアリ!眺望は素晴らしいよ!



補足de知識

※1 世紀の大事業!黒部ダム

戦後の深刻な電力不足に、関西電力が社運をかけて建設した黒部ダム。「秘境」黒部と言われるほどの過酷な自然条件のもと、豪雪や険しい地形に負けず、7年のときを経て昭和38年完成!1000万人の人手、513億円(今の金額で1兆円ぐらい)をかけた壮大なダムは、現在もフル稼働中。

※2 汗と涙の、大町トンネル
黒部ダムの総コンクリート打設量はなんと約1600万(東京ドーム体積の1.3倍)!その資材輸送ルートに、大役をかったのが大町トンネルだった。トンネル開通までの難工事は一言では言い表せない。厳冬中の工事に破砕帯(地下水を溜め込んだ軟弱な地層)との格闘など、尊い犠牲もはらみつつ、人力の血と汗と涙で貫通した。また、立山からの山越えルートでも、75キロもの資材を2730mもの山を超え人力で運んだという。

※3 スケール感が狂う!

左:黒部湖(ダムの湖)に流れついた流木。どーみても小枝なのだが。。。
中央:高さ2mほどの扉が、ダム壁から比べると、ちいさなボタンのように見える。
右:エメラルドグリーンにたゆたう湖面。東京ドーム151杯分を貯水できるという。

※4 大自然にうっとり、黒部に感動

左:立山アルペンルートの眺望。四季折々の美しさを体感できる!
中央:壁に打ち付けられた階段。巨大な黒部ダムをさまざまな角度から堪能できるように、展望台がたくさんあるのだが…。階段がむき出し。こんな所でも自然を体感できるとは…。とほほ。
右:長野名物「おやき」。しめじ野菜、野沢菜など、各売店にて200円。
その他「山いちごのソフトクリーム」300円も人気とか。


今週の「ツウ」快ふしぎ発見!

今週の「ツウ」快ふしぎ発見!今週の「ツウ」快ふしぎ発見!
黒部ダムの両岸にある、パルテノン神殿のようなコンクリート壁。これは、ダムの堰を造る際に使用したもので、両壁に杭を打ち込み、ワイヤーを張っていました。そのワイヤーにコンクリートバケットを吊るし、枠で囲われたコンクリート堰にコンクリートが流し込み、ダムは造られたのです。生コン車1.5倍もの容量が入るバケットが行き来してたなんて、これまたスゴイスケールですよね!


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ライタープロフィール

◎アドバイザー:《羅針盤》
HP ⇒http://www.geocities.jp/dm97032/works/top.htm
建築家の異色ユニット。
自らの事務所を持ち、建築家として建物のプランニング・設計する側ら、オリジナル家具・インテリア小物や雑貨などのデザイン制作を担当するなど幅広く活動中。「明日の生活を建築・インテリアで改革」と豪語(笑)する、自然愛好家たち。
◎文:たばたひろえ